Ken Park
Ken Park  Ken Park
(2002) on IMDb


2002年/アメリカ=オランダ=フランス/カラー/96分
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(初出:「Cut」2003年10月号 映画の境界線26、抜粋のうえ加筆)

 

 

サバービアで年を取るといういことは

 

 ラリー・クラークとハーモニー・コリンという『KIDS』のコンビの映画だからといって、ティーンに対する視点や描写ばかりに注目や期待をするのは大きな間違いだ。ドラッグ、暴力、セックス、マスターベーションなど、ティーンの欲望が剥き出しになってはいるが、それが映画の中心にあるわけではない。

 この映画では、クラーク、そして『ヴァージン・スーサイズ』や『エデンより彼方に』の撮影でサバービアと接点を持つエド・ラックマンがふたりで監督と撮影を兼任している。彼らが目を向けているのは、サバービアに暮らす親と子の関係であり、映像は、サバービアで年を取るとはどういうことなのかを浮き彫りにしていく。

 サバービアには、すべてが新品の状態から新しい生活を始め、それをずっと続けていけるかのような幻想がある。だからこの映画にもあるように、キッチンなどを磨きたてるのだが、それでも人は年を取っていく。だが、年はとっても成熟していくことに意味を見出すことはできない。価値があるのは、新しいこと、若いことであるからだ。年を取っていく親は、何とか若さを保とうとし、それが難しくなると子供の若さを羨むようになる。

 この映画には、5人のティーンが登場する。最初に登場するケン・パークは、あっという間に自殺してしまうが、映画のラストでその死に再び光があてられ、意味が膨らむ。残りの4人は、親との関係によって、ショーン、クロード、ピーチーズの3人とテートに分けることができる。彼らは、年を取るということをめぐって対照的な立場にあるといってよいだろう。最初の3人は、様々な意味で親たちに若さを搾取されている。

 ショーンは、ガールフレンドと彼女の母親の両方と付き合っている。彼が真っ昼間にその母親を訪ね、ベッドに誘うとき、部屋に飾られた写真のなかに、母親の過去が垣間見える。彼女と夫は、ハイスクール時代にアメフトの選手とチアガールとして注目の的になっていたのだろう。しかしいまではそんなふうに注目を集めることはない。彼女は若さを保っているが、スポーツをやめてビジネスマンになった夫は昔とは違う。まだ母親になり切れない彼女は、ショーンの押さえられない欲望を利用し、快楽を貪る。

 クロードの父親は、鍛え上げた筋肉を息子に誇示し、威張り散らすが、その衰えを隠すことはできない。若さを失えば、彼に残されているのは、ビールとテレビの毎日だけだ。そんな彼は、自分の醜さに苛立ち、若さに嫉妬し、クロードに暴力を振るう。そして、へべれけに酔って帰宅した夜、耐えがたい孤独ゆえにクロードが寝ているベッドに潜り込み、彼の身体をまさぐってしまう。

 物静かな少女ピーチーズの父親は、敬虔なクリスチャンに見える。しかしそれは、決して純粋な信仰ではなく、妻に先立たれた孤独から目を逸らす逃避的な行為であり、彼は、日に日に母親に似てくるピーチーズに歪んだ喜びを覚え、信仰を強要する。管理された生活を送るピーチーズは、父親の目を盗んでボーイフレンドとセックスしている。そのセックスでは、彼女はボーイフレンドをベッドに縛り付け、主導権を握ろうとする。


◆スタッフ◆

監督/脚本/撮影   ラリー・クラーク
Larry Clark
監督/撮影

エド・ラックマン
Ed Lachman

脚本 ハーモニー・コリン
Harmony Korine
編集 アンドリュー・ハフィッツ
Andrew Hafitz

◆キャスト◆

ショーン   ジェームズ・ブーラード
James Bullard
クロード スティーヴン・ジャッソ
Stephen Jasso
ピーチーズ ティファニー・ライモス
Tiffany Limos
テート ジェームズ・ランソン
James Ransone
クロードの父 ウェイド・アンドリュー・ウィリアムズ
Wade Andrew Williams
クロードの母 アマンダ・プラマー
Amanda Plummer
ロンダ メーヴ・クインラン
Maeve Quinlan

(配給:クライド・フィルムズ)
 


 一方、テートの日常にはそんな搾取はない。彼は、祖父母と暮らしている。祖母はいつも彼のことを気遣い、面倒を見ようとするが、彼には年寄りのおせっかいが耐え難く、苛立ちを3本足の犬にぶつける。彼らのドラマでは、年の違いがテニスを通して強調される。祖父母は健康のためにテニスをするが、その姿は若さとは無縁である。テートは、テニスのテレビ中継で女子選手が上げる声をオカズにマスターベーションに耽る。だから搾取はないが、逆にテートの方が、年寄りに激しい嫌悪感を覚え、一線を越えてしまうのだ。

 この4人のティーンには、皮肉なコントラストがある。ショーン、クロード、ピーチーズは、それぞれに親や大人から若さを搾取されているにもかかわらず、彼らの3Pセックスの場面が物語るように、彼らはタフに生きている。逆にテートには、そんな抑圧がないのに、自分を追い詰めてしまうのだ。

 それでは、ケン・パークの場合はどうか。映画の最後で、彼がガールフレンドから妊娠を告げられたことが明らかになる。そこで彼が何を考え、自殺したのかはわからない。だが、4人のティーンのドラマを経て、このエピローグに至るとき、その気持ちがわかるような気がしてくる。妊娠を告げられた彼の脳裏をよぎったのは、サバービアで親になった自分の姿だったのではないだろうか。


(upload:2005/05/22)
 
 
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