MAMA
MAMA


2013年/カナダ=スペイン/カラー/100分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

“母性”と“適応”をテーマにしたホラー/ダーク・ファンタジー
ギレルモ・デル・トロ製作総指揮、ジェシカ・チャステイン主演

 

[ストーリー] 証券会社の経営に行き詰まり、精神を病んだジェフリーが、共同経営者と別居中の妻を殺害し、ふたりの娘、3歳のヴィクトリアと1歳のリリーを連れて逃走する。雪山で事故を起こした彼は、娘たちと森を彷徨い、古びた小屋にたどり着く。そこで父親が娘たちを手にかけようとしたとき、暗闇から現れた何者かが彼を消し去る。

 5年後、兄のジェフリーと幼い姪たちを探し続けてきたルーカスは、古びた小屋で野生化したヴィクトリアとリリーの姉妹を発見する。奇跡的に生き延びた彼女たちの精神状態に強い関心を抱いたドレイファス博士の協力のもと、ルーカスは恋人のアナベルとともに、博士が用意した屋敷で姉妹と共同生活を営むことにする。

 だが、そんなある日、アナベルの周りで不可解な現象が起こり始め、ルーカスが階段から転落して病院に運ばれる。

 『MAMA』(13)は、アルゼンチン出身のアンディ・ムスキエティの長編デビュー作になる。ムスキエティが2008年に発表した短編がギレルモ・デル・トロの目にとまり、長編化される運びとなった。ホラーというよりは、デル・トロが好みそうなダーク・ファンタジーに近い。

 作品のテーマになっているのは母性だ。古びた小屋に潜んでいた何者かには母性があり、幼い姉妹は生き延びる。一方、救出された姉妹の面倒をみることになるアナベルは、ロックバンドのベーシストで、決して家庭的とはいえない女性だったが、次第に母性に目覚めていく。

 ムスキエティ監督の話術や演出には、妙に緻密なところと曖昧なところがある。姉妹と環境に関する表現にはこだわりが感じられる。父親のジェフリーが事件を起こしたときに3歳だったヴィクトリアは、彼女を殺そうとした父親が何者かに襲われたときには、メガネを失っているため、世界がぼやけていた。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/原案   アンディ・ムスキエティ
Andy Muschietti
製作・脚本・原案 バルバラ・ムスキエティ
Barbara Muschietti
脚本 ニール・クロス
Neil Cross
製作総指揮 ギレルモ・デル・トロ
Guillermo del Toro
撮影 アントニオ・リエストラ
Antonio Riestra
編集 ミシェル・コンロイ
Michele Conroy
音楽 フェルナンド・ベラスケス
Fernando Velazquez
 
◆キャスト◆
 
アナベル   ジェシカ・チャステイン
Jessica Chastain
ルーカス/ジェフリー ニコライ・コスター=ワルドー
Nikolaj Coster-Waldau
ヴィクトリア メーガン・シャルパンティエ
Megan Charpentier
リリー イザベル・ネリッセ
Isabelle Nelisse
ドレイファス博士 ダニエル・カッシュ
Daniel Kash
ママ ハビエル・ボテット
Javier Botet
ジーン ジェーン・モファット
Jane Moffat
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(配給:)
 

 救出された彼女は、叔父のルーカスからメガネを渡され、はっきりした視界を取り戻す。そのとき彼女の目に映るルーカスは父親に見える(ニコライ・コスター=ワルドーが二役をこなしている)。3歳だった彼女は、父親が自分を殺そうとしたことを理解しているわけではないので、親近感を覚える者の存在が新たな環境への適応を容易にする。これに対して事件当時1歳で、現実の世界に縁がないリリーは、環境に適応することができない。その違いが、母性をめぐって彼女たちの運命を分けることになる。

 一方で、そこまで環境への適応、不適応を細かく描くのであれば、母性を持つ何者かに育てられることと野生化することの違いについても、もう少しなんらかの具体性を持たせるべきなのではないか。さらに入院中のルーカスの夢にジェフリーを登場させるのであれば、この兄の人物像にももっと奥行きを持たせるべきだったように思える。


(upload:2015/04/16)
 
 
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