おやすみなさいを言いたくて
Tusen ganger god natt / 1,000 Times Good Night  Tusen ganger god natt
(2013) on IMDb


2013年/ノルウェー=アイルランド=スウェーデン/カラー/118分/
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(初出:)

 

 

報道写真家だった監督自身の体験が反映された物語

 

 [ストーリー] アフガニスタンの首都カブール。取材のためなら命すら惜しまない報道写真家レベッカが、自爆テロのための儀式と準備を行なう女たちを撮影している。さらに真実へと迫るためレベッカは、女たちに同行するが、爆発に巻き込まれ危うく命を落としかける。

 家族が待つアイルランドへ帰ると、夫マーカスから思いもよらないことを告げられる。「もう無理だ」と。世界有数の写真エージェンシーと契約し、常に死と隣り合わせになりながらもアフガニスタン、コンゴなど紛争地帯へと赴き、トップクラスの報道写真家として仕事に邁進してきたレベッカ。だがマーカスはひと時も気の休まらない生活に疲れ、娘たちは母の死に怯えて暮らしていた。

 家族の幸せのために、「もう戦地には戻らない」とマーカスと約束するレベッカ。仕事を優先するあまり、娘の誕生日すら一緒に祝えず、まともにキッチンすら立つことのなかった彼女は、取材の依頼を断り家族との時間を取り戻そうとするが――。[プレス参照]

 北欧の映画界には、ストーリーで表現するのではなく、観察者としてある状況に置かれた人物たちに迫り、内面を炙り出したり、現実を掘り下げたりする監督たちがいるように思う。

 たとえば、スウェーデンのルーカス・ムーディソン『ショー・ミー・ラヴ』、『リリア 4-ever』、『マンモス 世界最大のSNSを創った男』)やリューベン・オストルンド『インボランタリー(英題)』『プレイ』『フレンチアルプスで起きたこと』)、フィンランドのアク・ロウヒミエス(『フローズン・ランド(英題)』、『フローズン・シティ(英題)』、『ネイキッド・ハーバー(英題)』)だ。デンマークのトマス・ヴィンターベアスサンネ・ビアの作品にもそういう要素がある。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   エーリク・ポッペ
Erik Poppe
脚本 ハラール・ローセンローヴ=エーグ
Harald Rosenlow-Eeg
撮影 ヨン・クリスティアン・ローセンルン
John Christian Rosenlund
編集 Sofia Lindgren
音楽 アルマン・アマール
Armand Amar
 
◆キャスト◆
 
レベッカ   ジュリエット・ビノシュ
Juliette Binoche
マーカス ニコライ・コスター=ワルドー
Nikolaj Coster-Waldau
ステフ ローリン・キャニー
Lauryn Canny
リサ アドリアンナ・クラマー・カーティス
Adrianna Cramer Curtis
テレサ マリア・ドイル・ケネディ
Maria Doyle Kennedy
トム ラリー・マレン・Jr.
Larry Mullen Jr.
-
(配給:KADOKAWA)
 

 そして、『バンチ・オブ・ファイブ(英題)』、『ハワイ、オスロ(原題)』、『トラブルド・ウォーター(英題)』からなる“オスロ三部作”を作ったノルウェーのエーリク・ポッペも、そこに加えることができる。しかし、この新作は、どちらかといえばストーリーで表現する世界になっている。

 その違いは、おそらくポッペのキャリアとも無関係ではない。彼は報道写真家として活動したあと映画界に入り、ベント・ハーメル監督の『卵の番人』の撮影で評価され、監督として作品を発表するようになった。オスロ三部作における観察者的なスタンスはそうした背景から生み出された。

 しかし、この新作にはポッペの個人的な体験や世界も反映されている(三部作最終章の『トラブルド・ウォーター(英題)』の物語は、ポッペの親戚に起こったことがもとになってはいるが、映画はそれを感じさせない)。その違いが、対象との距離をまったく異なるものにしている。この映画のストーリーは感動的ではあるが、個人的には彼の観察者としての視点により魅力を感じる。


(upload:2015/04/15)
 
 
《関連リンク》
エーリク・ポッペ 『トラブルド・ウォーター(英題)』 レビュー ■
リューベン・オストルンド 『フレンチアルプスで起きたこと』 レビュー ■
スサンネ・ビア 『真夜中のゆりかご』 レビュー ■
トマス・ヴィンターベア 『偽りなき者』 レビュー ■

 
 
 
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