親切なクムジャさん
Chinjeolhan geumjassi / Lady Vengeance  Shinsetsu-na Kumuja-san
(2005) on IMDb


2005年/韓国/カラー/112分/シネスコ/ドルビーSRD
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(初出:「ぴあ」2005年11月24日号、若干の加筆)

 

 

私怨を越えた罪悪感と苦悩を背負い
天使にも悪魔にもなるヒロイン

 

 復讐三部作の最後を飾る『親切なクムジャさん』もまた、過剰と抑制の落差が際立つ暴力描写、コントラストの強いグラフィックな空間の造形、簡潔でウィットに富む台詞など、パク・チャヌク独自のハードボイルドな美学に貫かれている。だが、この映画の復讐には、前二作とは異なる側面がある。それは単に主人公が女だということではない。

 『復讐者に憐れみを』では、誘拐が復讐の連鎖を生み出していく。姉を失い、臓器密売組織に復讐しようとする弟は、愛娘の命を奪われた父親に復讐される立場にもある。『オールド・ボーイ』では、15年間監禁された男とそれを仕組んだ男の間で、復讐の応酬が繰り広げられる。つまり、復讐をめぐって彼らの立場は転倒する。

 『親切なクムジャさん』は、復讐だけに注目するなら、その図式はシンプルだ。復讐するのはクムジャであり、復讐されるのはペク先生だ。しかし、彼女を復讐に駆り立てる動機は決してシンプルではない。

 ペク先生は誘拐した少年を殺し、幼い娘を殺すと脅されたクムジャは、彼の罪をかぶって自首し、刑務所に13年間服役する。そんな彼女にとって復讐とは、必ずしも私怨を晴らすことだけではない。彼女は、ペク先生と少年の遺族の間に立ち、少年を殺した人間が背負うべき罪悪感や遺族の苦悩をも引き受けようとする。だから、極端な二面性を持ち続け、天使にも悪魔にもなる。


◆スタッフ◆

監督   パク・チャヌク
Park Chan-wook
脚本 チョン・ソギョン、パク・チャヌク
Jeong Seo-Gyeong, Park Chan-wook
撮影 チョン・ジョンフン
Jeong Jeong-hun
編集 キム・サンボム、キム・ジェボム
Kim Jae-beom, Kim Sang-Beom
音楽

チョ・ヨンウク
Jo Yeong-wook


◆キャスト◆

クムジャ   イ・ヨンエ
Lee Yeong-ae
ペク先生 チェ・ミンシク
Choi Min-sik
ジェニー クォン・イェヨン
Kwon Yea-young
クンシク キム・シフ
Kim Shi-hoo
パク・イジョン イ・スンシン
Lee Seung-Shin
チェ班長 ナム・イル
Nam Il-woo
伝道師 キム・ビョンオク
Kim Byeong-ok

(配給:東芝エンタテインメント)
 


 刑務所では、顔から光がこぼれると囁かれるほどに囚人たちの崇敬を集めるが、その陰で罰が必要な人間は巧妙に葬り去っていく。そして、私怨を越えた罪悪感や苦悩を引き受けているからこそ、意外な事実が明らかになった時に、私怨とは無縁の壮絶な復讐劇を演出することにもなるのだ。ちなみに、その復讐劇は、天使にも悪魔にもなれない人々の内面が炙り出されるグロテスクかつ滑稽な場面となっている。

 この映画の冒頭で、出所したクムジャの前に、穢れを落とすための白い豆腐が差し出されるとき、彼女はそれを無視する。そしてラストでは、白いケーキを抱えた彼女が、禊の時を迎えるのだ。


(upload:2007/02/17)
 
 
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