特捜部Q 檻の中の女
Kvinden i buret / The Keeper of Lost Causes


2013年/デンマーク/カラー/97分/スコープサイズ/ドルビー
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(初出:)

 

 

北欧ミステリーを代表する人気シリーズの映画化
5年前に起こった女性議員失踪事件の真相を追う

 

[ストーリー] 殺人課の敏腕刑事カール・マーク。ある事件で部下を失い重傷を負った彼は、復職後に新部署「特捜部Q」への転属を命じられる。“終わった”と判断された捜査報告書の整理があらたな仕事となったが、それらの資料の中には5年前に話題となった美人議員ミレーデ・ルンゴー失踪事件の捜査ファイルも含まれていた。

 ミレーデは弟との船旅の途中で行方不明となり、その後も何も発見されないまま“船上から投身自殺”と結論づけられていた。だが、その捜査結果にあらためて違和感を持ったカールは、助手のアサドと共に調査を開始する。そして、次々と明らかになる新事実により「彼女は自殺などしていない。事件に巻き込まれたのだ」という確信が導きだされていく。果たして、彼女は殺されたのか?それとも――?[プレスより]

 北欧ミステリーを代表するユッシ・エーズラ・オールスンの人気シリーズの第一弾『特捜部Q 檻の中の女』が、ニコライ・アーセル脚本、ミケル・ノルガード監督で映画化された。その見所は、原作と同じように大きくふたつに分けられる。

 ひとつは、5年前に起きた未解決事件の真相だ。女性議員ミレーデは船上で何者かに拉致され、与圧室の中に監禁されていた。彼女には犯人の動機がわからないが、食事と排泄のためのバケツが用意され、一年ごとに気圧が上げられていく。この手の込んだ計画は、パク・チャヌクの『オールド・ボーイ』を連想させる。

 もうひとつは、カールとアサドという主人公の魅力だ。カールは腕利きのベテラン刑事だが、皮肉屋で強引な行動をとるため、周囲から煙たがられている。しかも、部下を亡くし、パートナーが半身不随となり、自らも重傷を負った事件の後遺症で、情熱を失い、いつも機嫌が悪い。そんなカールは、警察署の地下に新設された部署“特捜部Q”の責任者に任命され、体よく厄介払いされる。

 その部署に助手として現れるのがアサドだ。中東からの移民であるアサドは、未解決事件の資料をてきぱきと整理し、やる気を見せる。資料のなかでカールの目にとまったのが、ミレーデ失踪事件で、ふたりは彼女の足跡を辿り出す。アサドは鋭い洞察力の持ち主で、思わぬところから手がかりを拾い上げる。

 この映画を観てまず驚かされるのは、かなりの長さがある原作を97分にまとめていることだ。しかも映画には、原作とは一味違うメリハリがつけられている。


◆スタッフ◆
 
監督   ミケル・ノルガード
Mikkel Norgaard
脚本 ニコライ・アーセル
Nikolaj Arcel
原作 ユッシ・エーズラ・オールスン
Jussi Adler-Olsen
撮影 エリック・クレス
Eric Kress
編集 Morten Egholm, Martin Schade
音楽 Patrik Andren, Uno Helmersson, Johan Soderqvist
 
◆キャスト◆
 
カール・マーク   ニコライ・リー・コス
Nikolaj Lie Kaas
アサド ファレス・ファレス
Fares Fares
ミレーデ・ルンゴー ソニア・リクター
Sonja Richter
ハーディ・ヘニングスン トロールス・リュービュー
Troels Lyby
マークス・ヤコプスン ソーレン・ピルマーク
Soren Pilmark
ウフェ ミケル・ボー・フォルスガード
Mikkel Boe Folsgaard
-
(配給:マグネット・コミュニケーションズ)
 

 たとえば、特捜部Qの位置づけだ。原作では、誕生の発端は政治家のパフォーマンスで、それなりの予算が出る。だから、カールの上司マークスは、異端児を隔離できるうえに、予算の大半を自分たちで使えることを喜ぶ。政府肝いりの部署なので、カールはどの事件を再検証するのか報告を求められるが、単独での行動が許される。

 だが、映画の方では、新部署にそこまでの権限はない。目的はあくまで古い捜査資料の整理、机上の再検証に限られている。だから上の意向を無視して再捜査に乗り出し、それを進めるふたりは、マークスから警察手帖を取り上げられる。そして、それでも真相に迫ろうとする彼らの活躍が、新部署の位置づけや権限そのものをも変えていくことになる。

 さらに、監禁されたミレーデと犯人とのやりとりにも違いがある。原作では、与圧室につけられた窓を通して犯人が顔を晒したとき、ミレーデはそれが誰なのかすぐにわかる。しかし映画では顔を見ただけではわからない。その正体は、ミレーデが命を奪われようとする終盤まで明らかにされず、原作とは異なる緊張感が生み出されている。

●“特捜部Q”シリーズ映画化第二弾『The Absent One(英題)』(14)予告。


(upload:2015/02/09)
 
 
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