IFILMとALWAYSi.com

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(初出:「CD Journal」2000年6月号、若干の加筆)

 「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟、「シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン、「マグノリア」のポール・トーマス・アンダーソンや「スリー・キングス」のデイヴィッド・O・ラッセル、「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズなど、 このところアメリカ映画界では新世代の監督たちの台頭が目立っている。彼らの背景、キャリア、主題や表現スタイルは多様であり、特に共通点があるわけではない。

 ただひとつ言えるのは、映画における現実と虚構のとらえ方が変わってきているということだ。同じ虚構の世界であっても、これまでの監督たちは確固とした現実を前提として魅力的な虚構の世界を構築してきた。 しかし新世代の監督たちにとって現実はすでに虚構に満ち満ちている。だから現実という前提などおかまいなしに、最初から大胆に虚構を前面に押しだし、虚構を突き詰めることによって独自の現実をつかみとろうとする。

 ひと昔前であればそういう感性が生かせる場所はインディーズに限られていた。ところがいまでは、虚構に満ちた現実を生きる観客の多くが、そういう感性についていくことができる。そして客が入るのであれば、 メジャーのスタジオもそれを無視することができない。だから個性的な若手の監督たちの台頭が可能になるのだ。

 そんな背景を踏まえて筆者が注目したいのが、映画ファンと新人の映画作家と映画産業を結ぶようなオンライン・コミュニティである。

 たとえばIFILM。このサイトでは、テレビ界などですでに活躍しているプロからまったくのアマチュアまで様々な作家の短編、長編が集められ、ユーザーはストリーム再生ソフトを使って実際にその作品を観られる。 観るだけでなく、点数をつけたり、感想や意見を書き込んだり、作家にコンタクトをとることもできる。その得点や評価は、映画産業やマスコミと繋がるIFILMのネットワークにフィードバックされ、作家に大きなチャンスをもたらす。 それから、ALWAYSi.comでも、同じようにインディーズ作品が、短編、長編、ジャンルなどで分類され、自由に観て、得点がつけられるようになっている。

 こうしたサイトで人気を集めるような作品は、やはり冒頭で触れたような現代的な感性が印象に残る。たとえばテレビ界で活躍するプロのスタッフが作った10分足らずの短編『Sunday's Game』。この作品はIFILMで紹介されたとたんに問い合わせが殺到し、 そのプロデューサーがFOX2000とすでに契約を結んでいるということだが、確かに強烈なインパクトがあるブラック・コメディだ。

 

 


  登場人物は近所に住む5人の老婦人たち。そのうちのひとりがクッキーを焼き、4人が彼女の家に集まってくる。どうやら彼女たちは日曜日になると誰かの家に集まってゲームをやっているらしい。その集まりは実に和やかな空気が漂っているが、彼女たちが始めるのはなんとロシアン・ルーレットなのだ。

 しかしそこには「ディア・ハンター」のような緊迫感は微塵もない。彼女たちは世間話をしながら、次々に銃を受け取り、こめかみに銃口を押しつけ、引き金を引く。ついに犠牲者が出て、血しぶきがテーブルクロスに飛び散るが、誰も驚かない。 それどころかホストの老婦人は次のプレイヤーに向かって、テーブルクロスが汚れるから銃口を口に押し込もうと言い放つ。老婦人たちは壮絶な死を遂げていくが、その場の日常的な空気は決して崩れず、ラストも見事に日常的なオチがつく。

 この短編に対するユーザーたちのコメントをチェックしてみると、現実的な視点から、登場人物たちが片っ端から死んだら次の日曜は誰がゲームをやるのかといった意見も確かにある。しかし、虚構を前提とした感性にはそんなことは問題ではない。 この実に短いドラマは、虚構を突き詰めながら、平凡な日常と暴力が瞬時に切り替わる現代のリアリティをとらえているのだ。

 同じことはALWAYSiで人気の高い長編のインディーズ作品『42K』にも当てはまる。この映画の主人公は、サバービアに暮らし、退屈をもてあましている4人の若者たち。ひょんなことから古代の首飾りを手に入れた彼らは、4人の美女とパーティを開く幸運にめぐまれるが、 その最中に鋭利なナタを振り回すヴァンパイア集団に襲撃され、ニンジャや聖書研究家に救いを求める。

 このとんでもないドラマは、「スクリーム」などとも比較されているようだが、確かにそれは頷ける。『42K』は「スクリーム」と同じように、もはや恐怖としてのホラーすら通用しなくなったサバービアの虚構性を象徴するブラック・コメディなのだ。 しかも、その虚構性を突き詰めながら、家族や日常生活から宗教や人種問題まで現代アメリカ社会を痛烈に風刺してしまうところにリアリティがあるのである。

 ファンと新人作家、映画産業を結ぶこうしたオンライン・コミュニティが確実に広がれば、個性的な作家たちの台頭はさらに加速し、アメリカ映画界を活性化することになるだろう。


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