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この「プライト&プレモニション」の解説のなかで、シルヴィアンはこんなふうに語っている。「ホルガーは、1曲目の<プライト>のダビング編集を行い、大胆なカッティングによって見事な作品に仕上げた。僕はこの編集をフィルミック・クォリティ(映像の質)と呼んでいる。その編集内容は、聴くという要素を維持しながら、
リスナーの視覚的な想像力をふくらませる効果を持ち、どんな状況下においてもそのスタイルを変えていくものだ。このアプローチは、根本的に音楽というものが、視覚的な形態になるという興味深い可能性を示しているといえよう。それは、まるで映画を編集するようなものであり、過去のホルガーの方法ともかけ離れたものではないのである」
シルヴィアンは。既成の音楽スタイルに依存することをできるだけ排除し、音楽における視覚的な世界を拡張し、詩的な世界とおり合わせ、独自の表現を開拓していこうとしている。即興を基調としながら、お互いの音楽スタイルを解放し、既成の文法に依存しないサウンドを模索し、
磨き上げていく「レイン・トゥリー・クロウ」のサウンドは実に魅力的だ。そこには、シルヴィアンの世界の終末と再生への予兆が映し出されているが、その世界は、また新たなコラボレーションによって変化していくに違いない。
デイヴィッド・シルヴィアンの作品「錬金術」は、当初はカセットのみで発売された作品である。発表されたのは、「ブリリアント・トゥリー」と大作「ゴーン・トゥ・アース」の間の時期のこと。この作品は、曲目が新しい作品と入れ替えられて、
シルヴィアンの音楽活動の軌跡を集成した5枚組「ウェザーボックス」ですでにCD化されているが、この独立したCD化に際しては、カセットの曲もすべて収録されている。
内容は全曲インスト作品で、<美しき予兆 / Preparation for a Journey>、<銅の聖堂>が、ビデオ作品のための音楽であったり、<幼年期の刻印>が舞踏家ギャビー・エイジスのダンスのための音楽であったりと、クロス・メディア的な表現を試みるシルヴィアンの作家性を垣間見ることができる。
ちなみに、<シャーマンの言葉>はジョン・ハッセルとの共作、<銅の聖堂>は坂本龍一との共作で、その他はシルヴィアンのオリジナルである。
収録された曲は、年代的な開きがあり、内容の方ももちろん、一貫したコンセプトで統一されているわけではないが、「錬金術―可能性の兆し」というタイトルには注目してもいいだろう。この作品は、視覚的な要素を音楽に取り込んでいこうとするシルヴィアンの姿勢が明確に打ち出された作品であるばかりでなく、
先述したヴォーカル作品とインスト作品の相乗的な発展の出発点に位置する作品でもあるからだ。そうした意味で、この作品と前後する「ブリリアント・トゥリー」、「ゴーン・トゥ・アース」と対照して聴いてみることはとても興味深い。?錬金術?とか?可能性の兆し?といった言葉が、シルヴィアンの音楽性を象徴しているように思えてくるのではないだろうか。
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